乳首から出血がある場合の考えられる疾患を解説します。
乳管内乳頭腫の疑い
血の混じった分泌物が乳頭から出る場合、頻度が高い疾患として挙げられるのが「乳管内乳頭腫(にゅうかんないにゅうとうしゅ)」。
これは、乳管内に乳頭状の構造を持った良性疾患が出来るもので、40〜50代女性に多くみられます。
乳頭からの分泌物が自覚症状として最初に現れることが多く、乳頭からの分泌物を認める人の約3割がこの乳管内乳頭腫であると言われています。
分泌物の状態としこり
分泌物は褐色から黒褐色の血性分泌物、もしくは黄色の粘調なもので、分泌量は下着に付着する程度の少量から乳汁様に大量に出るものまでさまざまです。
典型的な例では、病変部を圧迫すると乳頭から血性の分泌物が出てきます。
病変は通常数ミリ以下のことが多く、しこりを触れないことも多いのですが、大きくなると柔らかくて表面が滑らかな類円形のしこりを触れるようになります。
しこりに痛みを感じることはありません。
乳管内乳頭腫の診断
乳管内乳頭腫(にゅうかんないにゅうとうしゅ)の診断は難しく、マンモグラフィや超音波検査ではこれといった特徴的な所見がありません。
マンモグイラフィではしこりを検出できないこともありますが、超音波検査では、拡張した乳管や腫瘤(しゅりゅう)像を認めることがあります。
また、乳管内乳頭腫と同様、血性の乳頭分泌物や乳管内の腫瘤を認める「非浸潤性乳管がん(ひしんじゅんせいにゅうかんがん)」との鑑別をするために、これらの画像診断に加えて、乳頭分泌物やしこりの部分の細胞や組織を調べてがんでないかを判断します。
乳管内乳頭腫の治療
これらの詳しい検査を行った後、乳管内乳頭腫(にゅうかんないにゅうとうしゅ)と診断されたら、日常生活に支障がなければ特に治療の必要はありません。
しかし、将来乳がんを発症するリスクが高いといわれているため、定期的な検診が重要です。
しこりが大きくなったり、分泌物の量が多くなった場合などは、手術により病変部を切除します。
このように、乳頭から出血がある場合は、症状もよく似た乳がんとの区別も重要になってくるため、症状に気付いた時には早めに専門医の診察を受けることが大切です。
by 松村圭子
成城松村クリニック院長
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